AI・IoTによるサブスクリプション(継続課金)がビジネスモデルを変える

インターネットのように、AI(人工知能)やIoTは全産業の競争環境における前提となる世界が今後やってくる。もしあなたが、「AIとIoTって何?」という状態であるなら、以下の記事でぜひその必要性を学んでほしい。もうすでにライバル企業は検討を始めている可能性があるし、AI・IoTの波に乗り遅れた際のリスクも大きい。AI・IoTはこれまでの業界のビジネスモデルを大きく変革する可能性を秘めている。

IoTとはなにか?

IoTとは、Internet of Thingsの頭文字を取ったものであり、モノのインターネット、つまりあらゆるものがインターネットにつながるということだ。言い換えると、モノのデジタル化であり、アナログな鍵がインターネットにつながってスマートフォンアプリ化してスマートロックとなる。スマートロックの機能としては、鍵の自動開閉やスケジュール開閉、開閉ログの取得、鍵の権限の受け渡しなど、さまざまなものがある。

アナログで物理的な鍵では「ドアを開ける、閉める」という単機能だったが、スマートロックでは上記のような多くの機能を提供できる。また、もし新しいサービスを考案すれば機能の追加もできる。IoTによりあなたのビジネスの幅が大きく広がるのだ。

すでに販売されているIoT冷蔵庫は、スクリーンが搭載され、インターネットにつながっている。そのため、たとえば外出先から冷蔵庫に「プリンがあるからおやつに食べてね」などのメッセージを表示できる。また、ドアの開閉を確認できるセンサーがあれば、開閉データを遠隔から確認して家族の安否を確認できる。冷蔵庫や電気ポットなどのIoT製品には高齢者などの見守り機能がついているものが多い。

IoT機器は、ただインターネットにつながるだけではなく、温度センサー、湿度センサー、人感センサー、GPSなどセンサーが付属しているとより便利な機能を提供できる

スポーツ用品メーカーのミズノが販売しているIoT野球ボール「MA-Q(マキュー)」では、内蔵センサーが球速や回転数、回転軸を計測し、その結果をスマートフォンアプリなどから確認できる。他にもIoT自転車では、速度やタイヤとペダルの回転数などを計測でき、自転車競技の練習にも生かすことができる。

筆者が非常に便利だと思うのは、「IoT傘立て」である。傘立てが青色やオレンジ色に光り、それぞれ雨、晴れの天気予報を自動表示してくれる。これだと、傘立ての色を見て「青色だから今日の天気予報は雨か。今日は傘を持っていこう」とできる。

上記のようにさまざまなIoT製品が考案されている。

AIとIoTの関係

さて、AIとIoTは同じような文脈で語られることが多い。AIとIoTはそれぞれ補完関係にある。IoTは単にモノがインターネットにつながっており、情報をやりとりすることしかできない。つまり、GPSなどのセンサーで情報を集めるか、情報を取得することだけしかできない。IoTには、「自律的に自ら考える」ということができないのだ。

一方AIは自律思考が可能だ。たとえば、ワインの成分データから「ワインの品質」、マグロの尾の画像データから「マグロの品質」を判定することができる。ワインやマグロの品質は、これまで熟練した職人にしか見抜けなかった。AIは、職人の技術を模倣し、自律的に判断することが可能となる。

IoTは情報を集めるか取得するかということができないのに対して、AIは「思考する」ことができる。IoTとAIが組み合わさることで、より高度なサービスを提供することができるのだ。

AIとIoTを組み合わせたサービスの例として、タクシーの需要予測がある。代表的かつ重要なIoTデバイスとしてスマートフォンがある。スマートフォンにはGPSなどさまざまなセンサーが搭載されている。NTTドコモは、スマートフォンの位置情報を取得し、それをAIで解析して「いつ・どこで・どれだけ」タクシーの需要があるかを予測するサービスをタクシー業者に対して提供している。

サブスクリプション(サブスク)というビジネスモデルの変革

IoT製品は、ただ便利なだけではなく、既存のビジネスモデルを大きく変革する。たとえばアナログな鍵は、一度売ったらそれで終わりの商売だ。一方で、スマートロックには、継続課金(サブスクリプション、略してサブスク)という道がある。サービスを契約して毎月500円を課金してもらう。さらにはオプション料金で機能を上乗せするという選択肢も見える。

これまであなたの商売が単に物理的なモノを売るというだけだった場合、デジタル化することで新しいビジネスを構築することが可能となる。

現在では、動画配信、自動車、家具、家電、なんでもサブスク化の流れにあるが、ある意味それは当然ともいえる。今後もその傾向は続いていくだろう。このサブスク化の流れは一過性のものではない。今後、全産業においてサブスクへの対応が不可欠である。

サブスクは顧客の囲い込みにつながる

サブスクへの対応を考慮しないことは、非常に危険である。もしあなたのライバルがいち早くサブスクに着手した場合、顧客が継続的に奪われてしまうからだ。たとえば、ワインのサブスクに加入し、毎月ワインが送られてくるなら、スーパーで他のワインを購入しようとは思わないだろう。また、携帯電話も一度変えると、どんなにメリットがあっても、他の業者に変更するのを躊躇してしまう。このように、サブスク(継続課金)には顧客を囲い込む効果があるのだ。

モノのデジタル化からヒトのデジタル化へ

IoTはモノがインターネットにつながり家電製品になることだが、これはアナログなモノのデジタル化といえる。そしてモノのデジタル化が進んだ先にあるのがヒトのデジタル化である。

IoTにより、ヒトに関する次の5つ情報をデジタル化できる。ヒトに関する情報をデジタル化するために大きな役割を果たすのが、やはりスマートフォンである。スマートフォンはヒトの言葉や音声、位置などを認識するセンサーとして活用できる。

①発言・・・スマートフォンやPC、Amazon AlexaなどAIアシスタントなどのマイクで把握・デジタル化
②行動・・・クレジットカードなどで購買情報、人感センサーで人の存在、カメラで店の混雑状況、GPSで人の動きや滞在時間を把握・デジタル化
③生体情報・・・IoT時計やメガネで血圧や眠気、心拍センサーで鼓動などを把握・デジタル化
④労働・・・ペーパーレス、テレビ会議、在宅勤務、ドローンの利用などによるデジタル化
⑤知恵(カン)・・・AIによりデジタル化

病院や介護施設などでは、これまで患者や高齢者の見守りのために人が歩き回って確認をしていた。夜に徘徊する患者や高齢者の見守りとして、たとえば人感センサーと心拍センサーなどが活用されている。廊下に人感センサーを設置すれば人の出歩きを遠隔から把握でき、患者や高齢者の体に心拍センサーをつければ容態を見回る必要なく確認できる。これにより患者や高齢者の「行動」をデジタル化でき、同時に職員の「労働」をデジタル化できることになる。

ペーパーレス、テレビ会議、在宅勤務など、新型コロナウイルスの影響もあり日本でも労働のデジタル化が一気に進んだ。ペーパーレスにより印刷するコストや時間を節約でき、テレビ会議と在宅勤務が進展すれば海外の優秀なプログラマーを雇用することも可能となる。

現在では、遠隔通信手段としてメール、電話だけでなくLINEのようなチャットソフトが用いられることも多い。実際、メールよりもチャットソフトを用いたことでコミュニケーションスピードが上がったという報告がいくつもある。

また、また、崖や橋の状態を確認するなど危険な作業を伴う場合にも、人が目視する代わりにドローンを飛ばしてウェブカメラで確認することもできる。

AIとIoTは、今後世界を大きく変えていく。ぜひその波を乗りこなしていただきたい。
最後に補足としてIoTサービスの例を以下に列挙する。

IoTサービスの事例集

・Petcube Bites→ペットに自動でおやつを与え、中に入れたおやつの量が減ると自動注文
・FRECIOUS dewo bottle ウォーターサーバー→水が切れそうになると自動注文
・その他在庫の減少を自動的に把握し注文
・ボールにセンサーを内蔵し、回転数や速度などをスマートフォンで把握
・Airbnb→民泊仲介ウェブサイト
・Uber→タクシー配車サービス
・その他シェアリングサービス→カーシェアなど
・みまもりほっとライン(象印)→IoT電気ポットが使用履歴を遠隔にいる家族に送信
・歯ブラシG・U・M PLAY(サンスター)→正しい磨き方を確認
・コーヒーメーカー→味の好みを把握、家族に利用履歴を送信
・電灯、コンセント、エアコンなど家電→スマートフォンなどからスイッチオンオフ
・傘立て→天気を色で表示
・時計→歩数、移動距離、消費カロリーなどを把握
・鍵→アプリをインストールしたスマートフォンを鍵として利用するスマートロック
・冷蔵庫→遠隔から中身を把握、食材の注文、ドアの開閉状況を家族に送信
・まくら→いびき、寝言、睡眠時間などを把握
・皿→食べたスピードを管理
・工場→NEC「ものづくり見えるかソリューション」で工場全体のデータを可視化
・農業→ウェブカメラで生育状況を遠隔把握、センサーで気温や湿度、土壌温度などを把握
・自転車→速度や距離、タイヤの回転数などを把握
・キーホルダー→鍵の場所を通知
・メガネ→眠気を把握し、アラームを鳴らす
・犬→「INUPATHY」で犬の生体情報を解析して精神状態を見える化
・医療→生体情報モニタリング、遠隔医療
・介護→ウェブカメラや人感センサーなどによる高齢者の見守り
・人感センサー→ウェブカメラがふさわしくないトイレなどでの人の把握
・ゴミ箱→ゴミの蓄積情報把握(特に、公共・民間施設用のゴミ箱)
・スマートメーター→電力量の把握
・ドローン→危険な場所の状態確認や無人配送
・YouTube、Spotify→音楽や動画のストリーミング配信
・タイヤ→走行距離に応じて料金請求

【Kindle unlimited会員は無料】本記事執筆者 著
スポンサードリンク
おすすめの記事