2013年に、統計学ブームというものがあった。「統計学が最強の学問である」(西内啓、ダイヤモンド社)がベストセラーとなったように、書店に赴くと統計学に関する書籍がそこかしこに並んでいた。テレビでも統計学に関する特集が組まれるほどだった。現在ではそのブームも落ち着きを見せたように思う。しかしだ。この統計学ブームは、弱火でコトコト煮込んだスープのように、軽い沸騰を続けることになるだろう。
人工知能が得意とすること
何かが理解できることを「分かる」という。この「分かる」に「分」という漢字が使われているのは、偶然ではない。「分ける」と「分かる」。「分かる」とは「分ける」ことなのだ。そして、人工知能の十八番ともいえるのが、まさにこの「分ける」だ。そう、したがって、人工知能でさまざまなことが「分かってしまう」のだ。
採用プロセスに導入されるAI
大学生の就職活動ではエントリーシートの提出が求められる。そして、大半の学生が落ちる。人生が左右される残酷な瞬間だ。しかし、そのエントリーシートは、学生だけでなく採用側にとっても過酷なのだ。採用基準がブレないようにするため、数人の担当がすべてのエントリーシートに目を通す。仮に5人で5000枚のエントリーシートを見るとする。1枚に5分時間をかければ、25000分=416時間。一人あたり約83時間。まる10日分だ。人事はエントリーシートを見るのに、途方もない労力と時間をかけている。そこで、AIの登場だ。今、大企業を中心にAIによるエントリーシートの代読が行われ始めている。就活は結局、「採用する人」と「落とす人」を「分ける」ことだ。「分ける」ことにならAIが極めて有効なツールとなる。しかもその分ける精度は、「人間が目視した場合と大差ない」といえる状況になってきている。今後、多くの大企業がエントリーシートのAI選考を導入するのは、間違いない。
無料で簡単に、誰でもAIを使える時代
AIを使おうとすると、高度なプログラミング技術が必要になると誤解している人が多い。まったくそんなことはない。確かに、R言語やPythonというプログラミング言語をパソコンに導入する必要がある。ところが、今ではパッケージやライブラリ(人工知能を簡単に利用できるための無料ツール)が充実しており、数行のコードを記述(もっと簡単にコピー&ペースト)するだけでいい。AIを使うために越えるべき最も大きなハードルは、「R言語、Pythonをパソコンにインストールすること」なのかもしれない。それぐらい気軽に簡単に人工知能を使うことができる。
AIは未来のEXCELになる
私は大学生から社会人になったとき、「会社に入るんだからEXCELを使えるようにならないと」と思っていた。いつかの未来で、「もう社会人なのだからAIを使えないと」と言われるようになるだろう。もうAIは、すべての人のすぐそばに存在している。